夕焼けあんたいとるど。

2011年04月14日

ヘイト船長回顧録 / 鈴木慶一

ヘイト船長回顧録 ラヴ航海士抄ヘイト船長回顧録 ラヴ航海士抄
鈴木慶一

ソニー・ミュージックダイレクト 2011-01-26
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曽我部恵一プロデュース3部作の最終作。<Harbour side>と<City-side>とで構成されるコンセプトアルバム。記憶と記録に関する日本の作品で、これほどの完成度を誇るものを少なくともこの数年、僕は聞いたことがなかった。今は亡きSparklehorseに匹敵するサウンドコラージュと「かんかんのう」から「Witchi Tai To」まで、そして国籍からアナログ / デジタルの技術までをも縦横無尽に飛び回る極めて映像的な楽曲が居並ぶ宝石箱。優しくもそっけない慶一氏の歌唱と、濃厚で豊潤な意匠をまとったゲスト陣の存在感がここまで高度に絡み合ったまま適切なバランスを保っているのは、ある種の奇跡とすら思えるが、いかがでしょうか。

Official
posted by みかんぱ at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | 更新情報をチェックする

2011年04月13日

James Blake / James Blake

James BlakeJames Blake
James Blake

Republic 2011-03-22
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『CMYK』のセクシーさったらとんでもなかったわけだが、これはオープナーから壮絶なまでの「うた」のアルバムで驚いた。つぶやくようなか細さと芯の強さが同居したその声は、現実の中の歪みをさらに誇大に提示するかのように捻じ曲げられ、それが乗るバックトラックも人の手の介在が明らかなのに冷気そのもののダウナーさ。およそポップとはかけ離れた要素が満載の「ダブステップ」アルバムなのだが―これだけのバズになるにはもちろん理由がある。

ここには一晩の、あるいは青年期のメランコリアがふんだんに盛り込まれている。静寂(都会のそれは元来の意味からは変容してしまったが)の中に放り込まれる時にサブリミナルな歪さは、モダンな都市の生活者の孤独の体現そのものである。心酔するのも違うが卑下するほど僕の周囲には温もりがあふれているわけではない。パーソナルで深い悲しみを忌避しつつ、どこか共鳴してしまう、ベッドルームミュージック。嗚呼、平気でそういう付き合い方を選択できるようになったこと、そのものが悲しみだ。転換期を見せたダブステップシーンからポップへの殴り込み。存在感抜群の久しぶりのスターの誕生を喜ぼう。

Myspace
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2011年04月11日

Kaputt / Destroyer

KaputtKaputt
Destroyer

Merge Records 2011-01-25
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もう9作目ですか。それでいてこんなに瑞々しく、ロマンティックなポップを奏でられるもんなんですね。男女ツインの気だるいボーカルとアンビエントな質感を持った電子音を武器に、ジャズやシンセポップなどを横断する豊潤な意匠には脱帽。近年のポップの潮流の一部として旋律を楽しむのもよし、放たれる甘美なフレグランスで部屋中を満たすBGMとして機能させるもよしのバランスのとれた良作ですね。真なるロマンティックには、悪意と「私」の所在なさげな表情が不可欠だが、そのビターな質感は確かにここにある。お見事。

Myspace
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2011年03月26日

Shapeshifting / Young Galaxy

ShapeshiftingShapeshifting
Young Galaxy

Paper Bag 2011-02-15
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Starsの元ギタリストであるStephenとそのガール・フレンドCathrineらによるプロジェクト、Young Galaxyの新作。ライトにシューゲしたドリームポップの佳曲、「The Alchemy Between Us」に惹かれて購入したセルフタイトルの1stが、アートワーク通りのスペーシーさで良かったわけですが、今作では全編に散りばめられた空間的な電子音がこれまたアートワーク通りのほの暗い海の底感を演出。エレクトロニカな質感で解放感とは真逆の深度を増していくような息苦しさを見事に音像として映し出している。持ち前の清涼感と浮遊感も残っているので、聴きやすさは絶妙。アルバムごとにテーマを持って意匠をまとえる、誠実なバンドだなあと改めて。カナダにはいい系譜がしっかりと根付いているようで何よりです。

Myspace
 
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2011年03月24日

Cloud Nothings / Cloud Nothings

クラウド・ナッシングスクラウド・ナッシングス
クラウド・ナッシングス

ホステス 2011-02-16
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前作が好き過ぎたせいで少し戸惑ってしまったが、考えてみればこれが19歳の等身大か。あるいはノイズでくぐもっていたせいで老成した印象を勝手に抱いてしまっていただけなのかもしれない。クリーヴランドの新星、Cloud Nothingsの新作は若さはじける爽やかローファイノイズポップが気持ちいい作品に仕上がっている。
雰囲気としてはもはやポップパンクの領域。「Rock」なんていうまっすぐな曲があるのには好感を抱いたし、曲によってヴォーカリゼーションがコロコロと表情を変えるあたりも面白い。ただしこれは10代のための音楽。おじさんには哀愁漂うメランコリアと瑞々しさが同居していた前作の方が肌になじむんだよな。あのノイズは意匠や手段とは別の場所にあった。「あえて」のクリアさは本作が微妙にまとうローファイさが逆説的にギミックありきとなってしまったことを物語っている。佳曲揃いではあるんだけどね。
 
Myspace
 
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2011年03月11日

The Babies / The Babies

BabiesBabies
Babies

Shrimper Records 2011-02-15
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はい、ローファイポップです。オープナーからWoodsみたいだなーと思ってたらWoodsのベーシストのプロジェクトでした。で、Woodsよりガレージ色あるなあ、女性ヴォーカルの声が完全にVivian Girlsだなあ、と思ってたらVivian GirlsのCassieでした。というわけで「Woods+Vivian Girls」という形容以外に適切な表現が見当たらないほどに、分かりやすいサウンド。「ローファイ飽きた」な人じゃなくて、流行なんか関係なくもとからローファイ好きだった人向けですかね。Woodsほどストレンジじゃなく、Vivian Girlsより肩の力は抜けています。ドライヴに持って来いです。

Myspace
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2011年03月08日

Mine Is Yours / Cold War Kids

Mine Is YoursMine Is Yours
Cold War Kids

Geffen Records 2011-01-25
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どうした、北米インディブルーズロックの雄。これは「セルアウト」にもならない肩透かしな作品だ。ブルーズ/ソウルを下地にした音づくりは健在だが、意匠が完全にスタジアムを視野に入れたそれ。壮大な展開とアンセミックなメロディが羅列される様はもはや別のバンド。クールなジャケットと抜き差しならなくなった人間たちのそれでも生きようとする姿を丁寧に描いてきた姿勢が好きだったのに…。野心は悪くないが、僕はU2が苦手でしょうがないんだよ…。

Myspace
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2011年03月07日

Cape Dory / Tennis

Cape DoryCape Dory
Tennis

Fat Possum Records 2011-01-18
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Real Estate以外のいわゆるビーチポップなサウンドに昨年傾倒しなかった大きな理由は、そのレビューの際にも書いた話であるが、彼らには「夏の抗うことのできないキラキラした瞬間」が宿っていたが、その他の作品群には「夏嫌い」で「夏に思い入れのない」僕のような人間の憧憬を掻き立てるものがそこにはなかったからである。

ではなぜデンヴァーの素人みたいなラブラブ夫婦デュオ、Tennisが奏でる東海岸8カ月の思い出である処女作に夢中になっているのか。それはこんな僕にも「大好きな夏」があったことを思い出させてくれたからだ。

1年に2回くらいしか帰ってこない父との釣りとキャッチボールが何より好きだったあの頃。思えば今よりずっと涼しかった「夏」の日に、僕は確かに父と水族館に行った。水族館そのもののことは全く覚えていないが、帰りの信じられないほど長い渋滞に巻き込まれたときにカーステレオのラジオから聞こえてきたポップミュージックの質感をよく覚えている。その番組で最後に流れたのは奥田民生の「さすらい」だった。海の上をボートで半年以上も漂った夫婦が歌う、60年代ガールポップのキラメキは、「まわりはさすらわぬ人ばかり」のそのひとりになってしまった僕に、あの頃、少しいらいらした様子の父の後ろ姿を横目に、海岸線沿いの景色を何時間も楽しむことができた喜びをこれでもかと想起させた。

革新性を求める人のなかには、あまりにもそのままな発露にまゆをひそめる人もいるかもしれない。だが、思い出と結びついた音楽は強い。聴く側の姿勢としても、個人的な部分を前面に接するものがあってもいいだろう。これも音楽の楽しみ方。10曲28分の魔法にかかったもん勝ちだ。
 

Myspace
 
posted by みかんぱ at 02:35| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | 更新情報をチェックする

2011年03月06日

Deerhoof Vs. Evil / Deerhoof

ディアフーフ vs イーヴィル [日本盤のみ歌詞/対訳付] [ボーナストラック付き]ディアフーフ vs イーヴィル [日本盤のみ歌詞/対訳付] [ボーナストラック付き]
ディアフーフ

Pヴァイン・レコード 2011-01-06
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16年選手の通算10枚目。これはまた奇妙な力作だ。プライベートな場所を用いて録音された今作について、もっとローファイな質感なものを想像していたのだが、実際は前作よりもやたら抜けのいい音。それでいてギミックもしっかりしてる。ただし、とにかくチープ。こういうバランス感覚の鋭さが彼らの良いところだと思う。
 
タイトルやアートワークからもどこかポリティカルなものが感じられ、サトミ・マツザキのチャイルドライクな歌声はこれまでとはまた違う文脈で批評眼というものをまとったように聴こえる。とぼけた顔してスリリングな罠があちこちにしかけられているこの作品は、ストレンジポップのニュースタンダードを提示しうる作品なのかもしれない。あるいはいつも通りハチャメチャなだけか。
 
Myspace

posted by みかんぱ at 13:38| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | 更新情報をチェックする

2011年03月04日

Kiss Each Other Clean / Iron & Wine

キス・イーチ・アザー・クリーンキス・イーチ・アザー・クリーン
アイアン&ワイン

ホステス 2011-01-26
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アイアン&ワインことサム・ビームの4枚目。初期のアシッド・フォーク的風情は洗練さを極め、ジャズ/ブルーズ/ソウル、果てはアフリカンからフュージョンへという音楽的な幅の広さを実にモダンな質感で見せつける。それらをつなぐのは、温かみのある「うた」。
情景の描写が巧みなことでも知られる彼だが、それを見ているのは人であり、またその景色を伝え聞くのも我々人である。その間をつなぐ「うた」の力を感じさせてくれた。正直彼からそれを思い知らされるとは(いい意味で)思っていなかったので驚くと同時に嬉しさを感じずにはいられない。
盟友Calexicoの最新作はロードムービーそのものであったが、この作品もまたたくさんのアメリカを切り取っている。豊潤な音楽が持つ力を存分に放つ快作だ。

Myspace
 
posted by みかんぱ at 11:02| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | 更新情報をチェックする
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