Cape Dory / Tennis 夕焼けあんたいとるど。

2011年03月07日

Cape Dory / Tennis

Cape DoryCape Dory
Tennis

Fat Possum Records 2011-01-18
売り上げランキング : 51282

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


Real Estate以外のいわゆるビーチポップなサウンドに昨年傾倒しなかった大きな理由は、そのレビューの際にも書いた話であるが、彼らには「夏の抗うことのできないキラキラした瞬間」が宿っていたが、その他の作品群には「夏嫌い」で「夏に思い入れのない」僕のような人間の憧憬を掻き立てるものがそこにはなかったからである。

ではなぜデンヴァーの素人みたいなラブラブ夫婦デュオ、Tennisが奏でる東海岸8カ月の思い出である処女作に夢中になっているのか。それはこんな僕にも「大好きな夏」があったことを思い出させてくれたからだ。

1年に2回くらいしか帰ってこない父との釣りとキャッチボールが何より好きだったあの頃。思えば今よりずっと涼しかった「夏」の日に、僕は確かに父と水族館に行った。水族館そのもののことは全く覚えていないが、帰りの信じられないほど長い渋滞に巻き込まれたときにカーステレオのラジオから聞こえてきたポップミュージックの質感をよく覚えている。その番組で最後に流れたのは奥田民生の「さすらい」だった。海の上をボートで半年以上も漂った夫婦が歌う、60年代ガールポップのキラメキは、「まわりはさすらわぬ人ばかり」のそのひとりになってしまった僕に、あの頃、少しいらいらした様子の父の後ろ姿を横目に、海岸線沿いの景色を何時間も楽しむことができた喜びをこれでもかと想起させた。

革新性を求める人のなかには、あまりにもそのままな発露にまゆをひそめる人もいるかもしれない。だが、思い出と結びついた音楽は強い。聴く側の姿勢としても、個人的な部分を前面に接するものがあってもいいだろう。これも音楽の楽しみ方。10曲28分の魔法にかかったもん勝ちだ。
 

Myspace
 
posted by みかんぱ at 02:35| Comment(0) | TrackBack(0) | CDレビュー | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。